新着情報 News

元銀行「融資課長」の行政書士が教える~『法定相続情報証明制度』ってナニ?その③

2017年04月21日

今回からは、表記の「法定相続情報証明制度」について、少し具体的に説明をしてまいります。

【 1 】「法定相続情報証明制度」はどんな制度なのか?

「法定相続情報証明制度」は、これまで説明してきた通り、相続手続きを簡素化するための制度です。相続人の負担を軽減し、相続登記を促進する目的で創設されました。所定の書類を提出することで、戸籍謄本等の代わりになる証明書が交付されます。

(1)この制度は、特に「相続した不動産や預金などの名義の書換え」に関わる制度といっても過言ではありません。

(2)現在、故人(被相続人)の不動産や預金を相続人の名義に書換える際、登記所や金融機関から様々な書類の提出を求められます。遺言書や遺産分割協議書と並んで特に重要なのが、被相続人が生まれてから死亡するまでの戸籍謄本や相続人の戸籍謄本です。これらは、法定相続人の範囲を調べるために必要な書類になります。

(3)例えば金融機関の場合なら、おいそれと名義書換えに応じてしまったがために、後になって他の遺族が現れて文句を言われてはかないません。それを避けるために、法定相続人が誰と誰なのか、戸籍謄本を隅々まで見て確認する必要が出てきます。私も前職の「融資課長」だったり「預金事務課長」だったりした時には、古い戸籍謄本の内容を読み解くのに、専門家に教えてもらいながら大変苦労した経験があります。

(4)さらに、戸籍謄本を用意するのも大変な作業です。戸籍謄本を管理するのは市町村です。被相続人が生前に本籍地を変えたことがあれば、さかのぼって各地の役所に照会をかけなくてはなりません。広範囲に移動していた場合などは、それだけで大変な作業になってしまいます。「漏れなく謄本を集めるだけで数ヶ月もかかった」という話はザラにあります。

(5)名義を書換えるのが預金だけではなく、株式であれば証券会社に、不動産なら法務局(登記所)に、戸籍謄本を含む各種書類を提出しなければならず、専門家(行政書士等)の力を借りずに自力でやり遂げるのは容易ではありません。こうした手続きを簡素化しようというのが、法務省が導入するこの「法定相続情報証明制度」ということになるわけです。

(6)平成28年6月2日に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2016」では、現在問題になっている「空き家の活用」や都市開発等の円滑化のために、土地・建物の相続登記を促進させる旨が明記され、「ニッポン一億総活躍プラン」でも既存住宅の流通・リフォーム市場の活性化のために、相続登記促進に向けた制度を検討することになっていました。

(7)つまり、登記所や金融機関などの各所に戸籍謄本等を提出して、相続手続きを行なうことになる相続人の負担を軽減し、相続登記の促進を図るために、「法定相続情報証明制度」の創設が検討され、先の「その①」での記事の通り、5月下旬から開始される見通しになっています。

(8)「法定相続情報証明制度」は簡単に言うと、『相続人が登記所に所定の書類を提出することで、登記官が認証文を付した「法定相続情報一覧図の写し」を交付する』ことになります。これが戸籍謄本の代わりとなり、相続手続きが可能になるということです。

(9)それでは、もう少し詳しく実務上の流れについて説明していきます。この制度では、これまで説明してきたように、被相続人や相続人にまつわる戸籍謄本等を集めた上で、相続人が被相続人の「法定相続情報一覧図」を作成します。この「一覧図」を、集めた戸籍謄本等と併せて登記所に提出し、登記官による確認作業を経て、認証文を付した証明書が発行されます。

(10)この証明書が、集められた戸籍謄本等の代わりとなって、例えば、遺産分割協議書などと併せて提出することで、所有者の名義の書換えができるようになります。

(11)すなわち、現状では、相続人が登記所や金融機関などの様々な所へ、戸籍謄本等を複数冊提出しなければならず、大きな負担となっていました。しかし、この制度では、一度戸籍謄本等を揃えて登記所から証明書が発行されれば、後はそれを使って手続きを進めることができるわけですから、かなりの負担軽減になります。

(12)もちろん、現状の戸籍謄本での確認作業というものがなくなるわけではありません。登記所には提出しなければなりませんが、それ以降は提出しなくてもよくなるわけです。私の前職での経験からしても、金融機関の側での戸籍謄本等のチェックが不要になるのですから、これは大きなメリットと言えます。